ガリバーになった時のこと
この時期になると思い出す、小学2年生の時に1週間ほど入院した話。
おたふく風邪にかかって、顔がまんまるになってゲラゲラ笑っていたら、おたふく菌が股関節に移動して大暴れした。結果、激痛で動けなくなり、泣き叫びながら病院へ行き、即入院。絶対安静とのことで足を宙づりにされ、ベッドに固定。トイレの世話を赤ちゃん以来初めてしてもらって、わたしの人としての何かは一度死んだ。
ガリバーが小人に捕まった時、こんな感じだったじゃん。足を宙づりにされて動けないわたしを見て、両親がガリバーみたいだね、と言った。わたしの気持ちをほぐそうとしたジョークだったんだろう。でも、今見たら全然ガリバーじゃないな。錯乱してベッドに手足拘束されている人のほうがよっぽどガリバー。
ということがあった。クリスマスまでに退院できるかどうかみたいなタイミングで、サンタが病院に来れるか心配していた記憶があるから本当にこの時期だったんだと思う。もう15年くらい前になるのか。おたふくの菌が足に行っちゃうなんて本当に珍しいことらしいよ。それなったことあるよ!って人いないかな。今のところ出会ったことはない。
それで、入院中動けないし暇だろうってことで叔父が漫画を持ってきてくれて。「三つ目がとおる」を。小学2年生に。昔から手塚治虫が大好きだとはいえ、今読んでもかなり大人向けの描写があるし話も難しいのに(手塚治虫の漫画は大体そうだけど)。読んでたら当時怖いシーンがあって「怖いよー」と夜中にナースコールを連打して泣いた記憶がある。
小学2年生なんて今見ると何も考えてなさそうだなとか、何もわからないだろうって思うけど、こっちが思ってるよりもいろんなことを考えてるし、いろんなことをわかってるよね。どういう思考でどういう行動をとったのか、覚えてることたくさんある。そして本当に本当のベースは変わってない。人はそう簡単に変わらないってことよ。いいのか?それで。
入院中、仲が良かった男の子2人がお見舞いに来てくれた。後から聞いた話、わたしの車椅子姿にかなりショックを受けたらしい。いつも元気だった人の弱った姿、みたいなものはショックだよね。まあわかる。お見舞いに来てくれたのがなんだか気恥ずかしくて、でもすごい嬉しかった。嬉しかったな。お見舞いに来てくれてありがとう。
退院してからも、歩いちゃいけないってことで学校を休んでいた。どのくらいの期間だったかはもう覚えてないけど、結構長かった気がする。動けないし、家で暇だったから「メジャー」を1話から見たり、絵を描いてだらだら過ごしていた。いいなあ。わたしもその生活したい。今。
そんな感じでメジャーを見てたら同じクラスの子たちが急に訪ねてきた。
当時の担任がかなり変わった人だったんだけど(見た目は金髪にいつもサングラスをかけているおじいちゃん)。「生活」(だったっけな)という授業があって、いわゆる道徳を学びましょう、みたいな時間で、普通、「生活」の授業ではテキストを読んだり、やっても校内で植物と戯れる、みたいな感じだったのに、その先生は公園とかに連れてって「遊べー!」みたいなことをする人だった。最高だ。
その「生活」の時間、いつも通り公園に行ったらしいんだけど、わたしの家がその公園から近いっていうんで「じゃあ行ってみるか!」となってクラス全員で訪ねてきたらしい。めちゃくちゃだ。最高だ。
家に上がったりはしなかったんだけどね。玄関まで来て顔を見て帰っていった。今思えばそのバランスも最高だなと思う。本当にいい先生だった。元気にされているんだろうか。もうかなり高齢なんじゃないかな。元気だといいな。
わたしの大好きな、今思い出しても幸せな気持ちになる話。
悲しい思い出でも何もないよりはマシだって誰かが言ってたけど、できればやっぱり幸せな思い出の方がいいね。不幸が似合うようになったら終わりだしね。不幸が好きならともかく。
また最後にうるさいこと言っちゃったよ。どうでもいい。バーカバーカ。
みんな元気だといいね。わたしは元気です。ほいじゃ。